空き家のはてな

不動産が負動産にならないために!今話題の空き家問題について学び、お持ちの空き家を上手に利活用または処分しましょう!!

Ⅱ 空き家発生の抑制のために 

1.所有者心理

 

 空き家発生の一因であり、利活用の際の最大の問題となるのが「所有者心理」です。特に空き家所有者の中で、多い心理状況には以下のようなものがあります。

 

 「俺の目が黒い内は建て替え・売却・賃貸など許さん!」

「お父さんが建てた家をいじらないで!」

「将来のことは心配だが、その対処はなんか複雑で難しそう…」

 

 このような心理状況は、家族愛より生まれるものであったり、安定を求める国民的気質であったり、空き家問題解決の妨げとなっていることが少なくありません。

① 所有者が認知症となるケース

相続が発生するまで、売却・賃貸・資金の借り入れ・解体工事など空き家に関する一切の契約行為ができなくなります。

 ② 相続が発生した後に相続人の間で争いが起きるケース

相続人間で争っている間、遺産分割協議が成立するまでは、空き家が推定相続人全員の所有物となり、法律的に不安定な状態となりますので、売却・賃貸はもちろん、維持・管理すらできない状態になってしまいます。

相続人間の争いが長引くと、空き家固有の問題でもありますが、住宅の劣化が顕著となります。

 このようなことからも、所有者心理をよく理解すると共に、その対処のままで引き起こるリスクについてもしっかりと理解し説明していかなければなりません。

所有者が元気な内に「家」について親族間で話し合い、万一のときの対策を共有しておく必要があります。

一般的に年長者である空き家の所有者は、大切な住宅を円滑に継承できるような方策を考えて、承継者(相続人等)に周知しておく責任があるとの認識を促し、空き家マイスターは適切なアドバイスを講じなければなりません。

 

民法に関する復習】

 

法定相続分の具体例(図解)

 

 

(配偶者と子が相続する場合の法定相続分

 

  • 配偶者は2分の1
  • 子は各2分の1×2分の1=各4分の1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(配偶者と父母(直系尊属)が相続する場合の法定相続分

 

  • 配偶者は3分の2
  • 父母は各3分の1×2分の1

=各6分の1

  • この場合、兄弟姉妹に相続権はない。
  • 配偶者が死亡していれば父母は

各2分の1ずつ相続する

 

 

 

(配偶者と兄弟姉妹が相続した場合の法定相続分

 

 

  • 配偶者は4分の3
  • 兄弟姉妹は各4分の1×2分の1

=各8分の1

  • 配偶者が死亡していれば

各2分の1ずつ相続する

 

 

 

 遺言書の種類

 

種類

内容・様式

自筆証書遺言

遺言者が、遺言の全文・日付・氏名を自書し、捺印した遺言

公正証書遺言

遺言者の指示により公証人が筆記した遺言書に、遺言者、公証人および2人以上の証人が、内容を承認の上署名・捺印した遺言

秘密証書遺言

遺言者が遺言書に署名・捺印の上封印し、封紙に公証人および2人以上の証人が署名・捺印等をした遺言

 ※自筆証書遺言は立合い人は必要ない。

遺言による遺産分割禁止

被相続人は、 遺言の内容として5年以内の期間を定めて、 遺産の全部又は一部について遺産分割することを禁止することが可能とされています。

被相続人が、遺産分割の禁止をしたい場合は、必ず遺言でしなければいけません。遺言以外の方法で生前に遺産分割の禁止をすることはできないのです。

 

 

共同相続の効力

民法第898条  

相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。

 

配偶者と子供2人で土地を相続する場合を例にすると、共同相続とは、この土地に対して3人の相続人がそれぞれ権利を持っていることを意味します。法定相続分(配偶者は1/2、子供はそれぞれ1/4)に従うと、土地の権利の1/2が配偶者のものとなり、子供はそれぞれ1/4ずつ権利を持つことになります。 

賃貸不動産を共同相続したときは、その不動産から得られる賃料収入は、各相続人が法定相続分に応じて受け取ります。便宜上、誰か1人が代表して賃料を受け取ったとしても、各相続人に配分しなければなりません。

共同相続の状態では、相続人の1人が勝手に共有物の全体を処分することはできません。共同相続には、遺産の配分が決定するまでの間は、勝手に遺産を処分できないようにする意味もあります。

 

 

 

 

 

 

 

2.仏壇の存在

一人暮らしの居住者が高齢者用の住宅に転居したり、相続発生後に相続人が住まいを放置した場合等に仏壇の処理が問題となることがあります。特に、室内に先祖代々の仏壇があるために、売却・解体・賃貸等をすることができないというケースは空き家の発生を誘発します。

核家族化によって、子世帯は既に独立し自らの住まいを持ち、あるいは勤務先等の事情により親世帯の住宅に入居できないことは少なくありません。一般的にこのようなケースでは、子世帯の住まいに搬入できないほど大きな仏壇であることが多く、先祖代々の仏壇や親等の荷物の整理は、子世帯にとっては精神的な負担も重いものです。よって、その解決法はより小さなサイズの仏壇に代えたり、仏壇そのものを処分するしかありません。

仏壇の処分方法については、いずれの宗派であれ菩提寺(檀那寺)に相談します。菩提寺に位牌を預け、彼岸や盆に位牌を持ち帰り祭祀が可能な状態にしてもらえることがあります。

小さなサイズの仏壇に代えるには、小さなサイズの仏壇を購入後、位牌を移すことができ、実家の仏壇から新しい仏壇へ「魂抜き」、「魂入れ」といった先祖の霊魂を仏壇から抜き入れする法要をし、魂を抜いた古い仏壇を「ご供用・お焚き上げ処分」します。

さらに、一人っ子同士の結婚や長男長女の結婚などでは、家に仏壇が2つ存在することも起こり得ますが、宗派によってはよいことではないとされることもありますので菩提寺に相談してみる必要があります。

 

※必ずしも、全ての菩提寺が対応してくれる訳ではありません。

 

このように、仏壇の存在は空き家問題に取り組む上で、重要な問題となります。

物理的な問題のみならず、その多くは先祖代々守ってきた仏壇ですから、通常のモノのようには取り扱えず、これをいかにして子に継承するのか等は子世代から話を切り出すことは難しいといえます。

よって、親の方から話を切り出し、考え方や方向性を親族全員で共有し、万一に備えておくことが年長者の務めと言えるでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

(ポイント講義)

日本では1969年から2011年までの住宅投資の合計額が862.1兆円あったのに対し、住宅の累計資産残高は343.8兆円。その差額520兆円の住宅資産が失われたことになります。(内閣府「国民経済計算」)

また地方を中心とした地価の下落が継続していることもこれに後押しをして、住宅が資産価値を持っていた時代から「死産」あるいは「負の財産」になろうとしています。

経済的な側面からも空き家問題が与える影響は大きく、住宅の継承方法や価値の維持に向けた関係者間の話し合いを始めることは問題解決へ向けた第一歩なのです。

 

 

 

 

3.維持管理費用

空き家といえども、一軒の住宅を維持・管理していくためには、相当の費用が必要となることを認識しなければなりません。

ファイナンシャル・プランナーの業務の一つに、将来の家計がどう変化していくかをシミュレーションすることがありますが、現在の平均的な家計においての家計シミュレーションでは、子世帯は自己の住宅の維持管理費用の支払いに手一杯であり、実家(空き家)の維持管理費まで捻出することができない実態がわかっています。

住宅は適切な維持管理を施さなければ、急速に劣化が進むことはよく認識されています。

親世帯は空き家になった実家の維持管理費を子世帯が賄うことができるのか?

あるいは、所有者の責任として、子世帯に頼ることなく、維持管理費を自分で賄うことができるのか?それらをしっかりと把握しておく必要があります。

 

 

 

 

 

 

 

【小規模住宅用地の固定資産税の軽減】

 

 住宅用地はその面積に応じて固定資産税の課税標準が軽減されます。

 住宅用地は200㎡以下の部分を「小規模住宅用地」、200㎡超の部分を「一般住宅用地」といい、課税標準がそれぞれ6分の1と3分の1に軽減されます。(ただし建物の床面積の10倍が上限)

 

4.設計図書等の保管

空き家となったときに、その住宅の状態や品質・性能を把握しようとしても、建築当初の設計図書や契約書類が見つからないケースはよくあることです。

日本においては「土地」には資産としての価値を広く見出しますが、住宅そのものが「重要な資産」であるとの認識がまだまだ希薄です。

住宅という資産価値を保持するために重要なことは、まず資産の全体が分かる設計図書や契約書類の保管にしっかりと務めることです。

また、リフォーム工事の履歴や点検結果なども住宅の価値を高めてくれる書類となりますので関係者に対しては、将来を見据え、常日頃からそれらの書類の保管を促すよう空き家マイスターがアドバイスしていくことが大切です。